聞き手:堀内奈穂子、東海林慎太郎(AIT)
南米のコロンビアに生まれ、現在はメキシコシティを中心にインディペンデント・キュレーターとして活動するナタリア・ヴァレンシア。今回のレジデンス・プログラムと日本に関心を持ったきっかけは、彼女がパリのポンピドゥー・センターでフェローシップとして従事していた頃、ベルベル人女性の伝統的なテキスタイル(編物)をテーマに展示を行った際に、日本の絞り染め技法を使用している作品に出会ったことにさかのぼる。この滞在中は、絞り染め技法のほかに、日本の伝統的なテキスタイルについて視察を行いながらアイヌ文化にも触れ、日本をより深く理解しようと仏教や神道のリサーチを重ねている。
インディペンデント・キュレーターとして活動を始めた2006年ころ、母国コロンビアは50年以上にわたる内戦を終えた直後で美術(業界)はまだ栄えておらず、美術館やギャラリーのインフラや助成金など制作サポートの多くはメキシコの首都、メキシコシティに集中していたため、ヴァレンシアもそこに移住した。90年代のコロンビア内戦中は、常に緊張感のある危険な環境に囲まれ、そのトラウマから逃れるためにスピリチュアルな視点を持つようになり、さまざまな国・文化の伝統的な知識や技法に辿り着いたという。こうした自身のアイデンティティの形成について、近年行なった展示「Los Multinaturalistas」(2016年、コロンビア)のキュレーションが、非常に大きな役割を果たしたと語る。
彼女はメキシコやコロンビアではアートを専門とするラジオ番組は無いと、このラジオプログラムの意義について言及しながら、ラジオというアウトプットは、文字では伝えられないものを発信できる特殊な方法とスペースの使い方であると言う。また、これまでアメリカ大陸全体のアートシーンを紹介する雑誌もメキシコシティには無かったことから、2013年にオンライン・マガジン「Terremoto」がスタートした。ヴァレンシアはここで編集者として執筆しており、「Terremoto」はアートプロフェッショナルの声とアイディアをいち早く届けるために英語とスペイン語で発信され、2015年からは150以上の地域にも印刷版を配布している。
http://terremoto.mx
Interviewed by Naoko Horiuchi and Shintaro Tokairin (AIT)
During this interview, AIT asks some questions to the inviting curator in residence, Natalia Valencia, about how she grasps art scenes in Columbia where she was born and Mexico City that she is currently based in, together with her report on her research in Japan.